学習塾の経営を安定させる「宣伝・販促」知識
開業前に知っておきたい「宣伝・販促にまつわる法規」
経営者・塾長の法知識・モラルは「塾経営の安定性」に直結します。
できれば、学習塾の開業に「宣伝・販促にまつわる法規」を知っておきましょう。
※法規といっても難しくはありませんのでご安心ください。
SNSを上手く活用するために
開業後、自塾のイメージアップを狙ってSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用を検討されることでしょう。
SNSをうまく使えば、保護者はもちろん、保護者の友人・知り合いへも自塾の情報をお届けできるようになります。
生徒募集・退塾防止ツールとして使わない手はないでしょう。
※SNSの代表例
- LINE(ライン)
- YouTube(ユーチューブ)
- Instagram(インスタグラム)
- Twitter(ツイッター)
- Facebook(フェイスブック)
SNSの登場により、世間の目は厳しさを増しつつあります。
社会に発信された情報が、ひょんなことで槍玉にあげられることがないよう、広告法務を学んでおきましょう。
広告を取り巻く権利
広告に関係する権利や法律のすべてを知る必要はありませんが、思わぬ地雷を踏まないように勘所をつかむ必要はあります。
主な「広告を取り巻く権利・法律」は次のとおりです。
- 肖像権
- プライバシー権
- 商標権
- 商品化権
- 意匠権
- 商号権
- 不正競争防止法
- 民法(不法行為)
- 著作隣接権
- 著作権
- 所有権
- パブリシティ権
- 景品表示法
まずは「肖像権」。保護者からのクレームを回避
自塾のSNS運営にあたり、生徒の顔をネット上に投稿するケースが見受けられます。
そんな時に問題になるのが「肖像権」です。
肖像権とは、「自己の容姿を無断で撮影されたり、撮影された写真を勝手に公表されたりしないよう主張できる権利」です。
つまり、「無断でその人だと特定できる写真を撮ってしまう事は、その人にとっては不快に感じることにつながるためNG!」ということです。
「肖像権」を知らなかったというだけで、保護者や地域の人々から訴えられてしまうかもしれません。
学習塾では、生徒の保護・安全への配慮が求められますから、肖像権を守ることは塾の信用を守ることにつながります。
自塾のホームページやブログ、SNSに生徒の写真を掲載する場合は最低限、次の点に注意してください。
- 顔の一部(目など)を加工して、顔全体を露出しない
- 個人名を掲載しない
- 掲載することについて、生徒本人の了承を得る
なお、後々の保護者からのクレームを考えると、保護者に写真を提示して掲載許可をもらうに越したことはありません。
景品表示法(景表法)
自塾広告や折り込みチラシなどには、基本的に「最高」「日本一」「ナンバーワン」などの表現を使ってはいけません(根拠を示す必要あり)。
学習塾は景品表示法(景表法)で法的措置・規制があり、自塾の商品・サービスの品質を実際よりも優れていると偽って宣伝することはできません。
また、競合他塾が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝したりすることもできません。これらは、優良誤認表示に該当します。
故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認表示に該当する場合は景品表示法により規制されることになるので注意が必要です。
(事例)平成26年、消費者庁による景品表示法違反(優良誤認)の措置命令
全国に学習塾を運営する某事業者に対し、運営する学習塾の夏期講習や冬期講習の受講者を募集する広告に関する表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行った。
(違反内容)
「国公立大出身98%、精鋭講師陣による指導」「塾は講師で決まる」「厳しい研修を積み重ねてきた精鋭講師陣」「講師の力」等を記載するとともに、氏名及び卒業した国公立大学・大学院の名称を併記した自社講師の写真を掲載。
実際には、講師のうちの国公立大学・大学院出身者が占める割合は約14%にすぎず、講師の83.5%はアルバイトの現役国公立大生で、専任講師を足せば98%を超える。
消費者庁は「出身」と宣伝すれば、消費者はアルバイトを専任の講師と誤解するとして、虚偽の広告に当たると判断した。
「プロ講師」か「アルバイト講師」かという問題に加え、「出身校」か「在籍校」かという話もテーマになりました。
大きな違いではないようにも思われますが、広告がサービスに対してどのような価値となり、消費者にどのような認識を持たせるのか、その点を意識することが重要です。
魅力的に見える表現と、嘘になる表現の境目は微妙な領域です。
突き詰めると、広告はリスクと効果のバランス取りが重要だということがわかってきます。
クレームが起きやすいポイント
法律的には問題がなくとも、倫理的にNGであったり、情報を受け取る相手が不快に思う表現があります。
使用を避けた方がいい領域・言葉はパターン化されています。
- 危険・暴力
- 宗教関連
- 誹謗中傷
- 社会時事
- 性差別
- 差別人権
- わいせつ
- 政治的
これらの領域を扱うときは、特に注意しましょう。
まとめ
SNSを例に、学習塾の広告宣伝とリスク管理について書きました。
学習塾ではすべてのSNSを活用する必要はありませんが、各ツールの特性は押さえておいた方がよいでしょう。
他塾及び保護者との意見交換「交流系SNS」
- Facebook(フェイスブック)
- Twitter(ツイッター)
生徒・保護者への連絡「メッセージ系SNS」
- LINE(ライン)
写真で自塾のブランド構築「写真系SNS」
- Instagram(インスタグラム)
動画で自塾のブランド構築「動画系SNS」
- YouTube(ユーチューブ)
宣伝・販促にまつわる法規は様々あり、意識していなければ普段は気付けないようなものも少なくありません。
地雷のように埋まっているそれらのリスクに気付くためには、ある程度の法知識・モラル感が必要になります。
生徒が主要5教科の勉強を頑張るのなら、経営者・塾長は宣伝・広告の勉強を頑張る。
「大人も学び続ける」とぃう姿勢は、学びの重要性を生徒とも共有できて一石二丁です。
この姿勢も、自塾のブランドづくりになることでしょう。まさに学びの空間が「学習塾」といえます。